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令和5年度健保組合予算早期集計結果
医療費の伸びと高齢者拠出金の増加により健保組合全体で過去最大の赤字

健康保険組合連合会(以下健保連)が発表した「令和5年度健康保険組合予算編成状況ー早期集計結果(概要)についてー」によると、健保組合全体の経常収支は▲5,623億円で、過去最大の赤字を見込むことがわかりました。
※ 全1,380組合(令和5年4月1日時点)中、予算データの報告があった1,367組合の数値をもとに推計。

後期高齢者人口の増加に伴い後期高齢者支援金が急増

経常収入8兆6,161億円(前年度比2,295億円増)に対し、経常支出9兆1,784億円(同5,113億円増)となり、健保組合全体で経常収支は▲5,623億円の赤字となっています。赤字額は前年度から2,818億円悪化し、高齢者医療制度への拠出金の急増やリーマンショックの影響で財政が急激に悪化した平成21年度の▲5,234億円を上回る見通しです。
過去最大の赤字を見込む要因について健保連は、医療費の伸びと拠出金の増加を挙げています。令和5年度は、保険料収入8兆5,038億円(同2,317億円増)と、標準報酬月額や標準賞与額の伸びによる収入増が見込まれる一方で、医療費などの支払いに充てる保険給付費4兆7,820億円(同2,475億円増)、拠出金3兆7,067億円(同2,523億円増)が財政悪化に拍車をかけた形です。
医療費については、コロナ禍の受診控えで一時的に減少した令和2年度以降、上昇基調が続いており、令和5年度も前年度と同じ高い伸び率(5.5%)となる見通しです。また、拠出金急増の背景として、コロナ禍での医療費の減少によって生じた返還金による一時的な負担減の反動に加え、令和4年以降、人口のボリューム層である団塊の世代が75歳に到達しはじめたことで、後期高齢者支援金が急増(同1,967億円増)していることが挙げられています。後期高齢者人口の増加は令和7年度にかけて続くため、拠出金は今後さらに上昇することが確実視されています。

収支均衡に必要な実質保険料率が初の10%超

赤字組合数は全体の約8割にあたる1,093組合(前年度比130組合増)となっています。135組合で保険料率の引き上げを実施し、全国の健保組合の平均保険料率は9.27%(同0.01ポイント増)、収支均衡に必要な実質保険料率は10.1%(同0.25ポイント増)に上り、ともに過去最高を更新しました。協会けんぽの平均保険料率(10.0%)以上の料率を設定している健保組合は309組合で全体の2割を超えています。また、被保険者1人当たりの年間保険料は50万9,657円(同1万1,101円増)と大幅に上昇し、現役世代の負担増加に歯止めがかからない状況です。
国では、今後一層加速する超高齢社会や現役世代の減少を見据え、現役世代の負担に過度に依拠する現在の仕組みを是正し、年齢にかかわらず全国民が負担能力に応じて公平に支え合う「全世代型社会保障制度」の構築をめざし、高齢者の保険料負担をはじめとした制度改正を進めています。また、医療DX化を推進し、医療提供体制の効率化や質の向上を図るとともに、健康寿命の延伸に向けた疾病予防策を強化するなど、限りある医療資源を適切に使うための施策が一層求められています。

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