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拠出金は一時的に減少するも
▲2,770億円の赤字となる見通し

健康保険組合連合会(以下健保連)が発表した「令和4年度健保組合予算早期集計結果の概要」によると、健保組合全体での経常収支は▲2,770億円の赤字となることがわかりました。

※全1,387組合(令和4年4月1日現在)中、予算データの報告があった1,358組合の数値をもとに推計。

拠出金は令和5年度に2,600億円の増加が見込まれる

令和4年度予算は、経常収入8兆3,869億円(対前年度比2,653億円増)に対し、経常支出8兆6,638億円(同394億円増)となり、▲2,770億円の赤字となる見込みです。令和3年度と比較すると、赤字額は2,259億円減少しています。

赤字額が減少した要因について健保連は、高齢者医療制度への拠出金が3兆4,514億円(同2,080億円減)と大きく減少したことを挙げています。しかし、これは令和2年度の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、高齢者医療費が一時的に減少したことで精算戻り等の影響を受けた、令和4年度限りの一時的かつ極めて異例なケースとしています。今後は、拠出金減少の反動や、団塊の世代の高齢化による後期高齢者支援金の増加など拠出金の急増は必至であり、令和5年度は2,600億円の増加が見込まれています(下図参照)。

また、平均標準報酬月額は37万7,846円(同5,060円増)、平均標準賞与額は111万9,453円(同7万7,738円増)となり回復基調にあるものの、新型コロナ感染拡大前の令和元年度決算と比較すると低い水準のままとなっています。なお、保険給付費は4兆5,348億円(同2,379億円増)、保健事業費は4,483億円(同73億円増)を見込んでいます。

図 高齢者拠出金額の動向と見通し(健保組合分)
※出典:健康保険組合連合会「令和4年度健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について」(令和4年4月28日)より作成

平均保険料率は年々上昇し現役世代の負担は限界に

赤字組合数は対前年度比で105組合減少したものの、約7割が赤字予算となり、依然として多くの健保組合が厳しい財政運営を強いられています。平均保険料率(調整保険料率を含む)は9.26%(対前年度比0.03ポイント増)で、後期高齢者医療制度が創設された平成20年度以降最も高い水準です。健保組合の保険料率は年々上昇しており、協会けんぽの平均保険料率10.0%の水準に近づきつつあります。被保険者1人当たり保険料負担額は49万8,366円(同1万2,305円増)で、平成20年度と比較すると11万2,328円増加しています。

現役世代が減少するなか、令和7年には団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)となり、令和24年には高齢者人口がピークを迎えると推計されています。これに伴う拠出金負担の急増により健保組合が財政危機に陥れば、国民皆保険制度の存続にかかわります。「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」の構造の是正が重要であり、全世代型の社会保障制度へと転換することが不可欠です。

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