家族の加入について
健康保険では、被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行います。この家族のことを「被扶養者」といいます。被扶養者として認定されるためには、「国内居住」のうえ、「家族の範囲」と「収入」について一定の条件を満たしている必要があります。
- 被扶養者となるためには、健康保険組合の認定を受けなければなりません。
- 将来にわたって被保険者によって主として継続的に生計が維持されるのに必要な条件を備えているか、などを客観的な書類に基づき総合的かつ慎重に審査を行ったうえで決定します。
- 「加入事業所での家族手当付与対象者」や「所得税法上の扶養親族の対象者」が必ずしも健康保険の被扶養者の対象者と一致するものではありません。
家族の範囲
被扶養者となれる家族の範囲は、法律で決められています。さらに、同居・別居により、条件が異なります。
被保険者と同居でも別居でもよい人
- 配偶者(内縁でもよい)
- 子、孫
- 兄弟姉妹
- 父母など直系尊属
被保険者と同居が条件の人
- 上記以外の三親等内の親族
- 被保険者の内縁の配偶者の父母および子
- 内縁の配偶者死亡後の父母および子

認定条件の原則
- 認定対象者が健康保険法に定める被扶養者の範囲内であること。
- 認定対象者に優先扶養義務者が他にいないこと。
- 優先扶養義務者に扶養能力がなく、被保険者がその認定対象者を扶養せざるを得ない理由があること。
- 被保険者はその認定対象者を経済的に主として扶養している事実があること。(主たる生計維持者であること)
- 被保険者に継続的にその認定対象者を養う経済的扶養能力があること。
- 被保険者と同一世帯の場合は、認定対象者の年収が130万円未満(60歳以上及び60歳未満の障害年金受給要件該当者においては180万円未満)であって、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であること。
- 被保険者と別居している場合は、認定対象者の年収は上記と同じ年収基準に加え、被保険者からの送金額(仕送り額)が認定対象者の年収を上回っていること。
収入の基準
被扶養者における収入とは、税法上の所得額ではなく、税金等控除前の総収入を基本とします。また複数の収入を得ている場合は、その合算額を収入額として審査します。
基本限度額
- 60歳未満:年間収入130万円未満
- 60歳以上及び60歳未満の障害年金受給要件該当者:年間収入180万円未満
60歳未満 | 60歳以上及び 障害年金受給要件該当者 |
|
---|---|---|
給与収入がある場合 | 月額108,334円未満 | 月額150,000円未満 |
各種給付金等を 受給している場合 |
日額3,562円未満 | 日額4,932円未満 |
夫婦合算基準額
両親・義父母等を扶養する場合には、両親・義父母等の一方の収入が上記の基準内であって、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であってももう一方の収入が多く、双方を合算した収入額が次に掲げる額を超える場合は両親・義父母等ともに被扶養者となることはできません。
- 両親・義父母ともに60歳未満の場合:
年間収入合計260万円未満 - 両親・義父母いずれかが60歳以上又は60歳未満の障害年金受給要件該当者の場合:
年間収入合計310万円未満 - 両親・義父母ともに60歳以上又は60歳未満の障害年金受給要件該当者の場合:
年間収入合計360万円未満
収入の範囲
- 給与収入(交通費・賞与・一時金等含む)
- 各種年金等収入(老齢・遺族・障害等公的年金等・企業年金・個人年金・恩給等)
- 事業収入(自営業・漁業・農業等による収入・業務受託による収入等)
- 不動産収入(土地・家屋・駐車場等の賃貸収入等)
- 利子収入(預貯金・有価証券利子等)
- 配当収入(株式の配当金等)
- 雇用保険の給付(失業給付・傷病手当等)
- 健康保険の傷病手当金・出産手当金
- 労災保険の休業(補償)給付・傷病(補償)年金・その他給付金・年金
- 雑収入(原稿料・印税・講演料・FXや仮想通貨取引等で発生した利益・インターネットオークション等の収入・ネットショップでの収入等)
- 被保険者以外の者からの送金(仕送り)
- 一時収入(退職金・譲渡収入(遺産相続等)・山林収入(山林等の売却あるいは譲渡によって得た収入)・懸賞の賞金・生命保険金の受取等)
別居している場合
認定対象者が別居している場合、収入基準内であることに加えて、被保険者は下記の条件をすべて満たす送金(仕送り)をしていることが必要です。
- 認定対象者の収入月額より多い金額であること。
- 認定対象者が無収入である場合、生計を維持できる程度の送金として総務省家計調査報告に記載されている直近の「高齢単身無職世帯」の可処分所得額と同程度の金額であること。なお、被保険者を含む複数の送金者がいる場合、その送金額の合計が前述の可処分所得額と同程度以上であり、且つ送金者の中で最も送金額が多いこと。
- 認定対象者の世帯収入月額と被保険者からの仕送り額を合算した金額が被保険者の収入から仕送り額を除いた金額より少ないこと。
- 毎月、金融機関又は現金書留郵便等を利用し、定期的かつ継続的に送金(仕送り)していること。(一括送金、現金手渡し、被保険者名義のカードの共有は不可)
- 家賃・水道光熱費など認定対象者の生計費と認められるものが被保険者の口座から直接引き落とされている場合には、その金額及び内容を証明すること。
なお、下記に該当する場合は送金(仕送り)の確認を省略することができます。
- 人事異動に伴う単身赴任又は3か月以上の長期出張による別居
- 子の進学による別居
- *英会話学校などの「民間教育施設」や夜間の学科・通信教育課程及び海外の学校に在学・在籍している場合は省略できません。
- *省略の対象となるのは子のみ。同伴の親族も被扶養者となっている場合は、その親族の送金の確認は省略できません。
- 里帰り出産による別居
- 親族の介護のための別居
- 長期入院・病気療養による別居
- 特例扱い施設への入所による別居(以下に該当する施設)
- A. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- B. 介護老人保健施設
- C. 介護療養型医療施設(介護医療院)
- D. 身体(知的)障害者更生施設
「年収の壁」に対する政府の施策について(2023年10月より)
- 参考リンク
「年収の壁」とは
「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことです。
健康保険等の被扶養者がパートタイマー等で働き、年収が一定以上になると、被扶養者ではいられなくなり、健康保険や国民健康保険等の被保険者となりますが、そうなると社会保険料の負担が発生して、結果として手取り収入が減少する場合があります。
社会保険における「年収の壁」は、企業規模の違い等により、年収106万円と年収130万円の2つがあります。
(出典:「年収の壁」への当面の対応策(厚生労働省))
年収106万円の壁 | 従業員51人以上の企業、賃金月額88,000円以上(年収:約106万円以上)等、一定の条件を満たす場合は、社会保険料が発生。 |
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年収130万円(※)の壁 | 被扶養者の認定基準を満たさなくなるため、条件を問わず、社会保険料が発生。 |
- ※60歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円
年収130万円の壁に対する対応
被扶養者認定は前年の課税証明書等の確認で行われていますが、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となる場合は、事業主の証明を添付することにより、収入見込額が130万円以上であっても、引き続き被扶養者の認定を受けることができるようになります。
(同一の者について原則として連続2回までを上限とします)
年収106万円の壁に対する対応
社会保険適用促進手当(※)の支給等、労働者の収入を増加させる支援を行った企業に対して一定期間助成が行われます。
※社会保険適用促進手当
短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合、当該労働者の保険料負担を軽減するために支給することができる手当です。
社会保険適用促進手当は、給与・賞与とは別に支給するものとし、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象に考慮しないこととされます。
- ※対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の方。
- ※報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額。
- ※最大2年間の措置。
被扶養者認定における国内居住要件の追加について
2020年4月より、健康保険の被扶養者認定の要件に、国内居住要件が追加されました。日本国内に住所を有していない場合、2020年4月1日以降は、原則として被扶養者の認定はされません。(海外留学等、一定の例外あり)
国内居住要件の考え方について
住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすものとされます。
- ※住民票が日本国内にあっても、海外で就労している等、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、国内居住要件を満たさないと判断されます。
国内居住要件の例外
外国に一時的に留学している学生等、海外居住であっても日本国内に生活の基礎があると認められる場合は、例外として国内居住要件を満たすこととされます。
【国内居住要件の例外となる場合】
- 外国において留学をする学生
- 外国に赴任する被保険者に同行する者
- 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
- 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
- 1から4までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
国内居住者であっても、被扶養者と認められない場合
医療滞在ビザで来日した方、観光・保養を目的としたロングステイビザで来日した方については、国内居住であっても被扶養者として認定されません。
経過措置について
国内居住要件の追加により被扶養者資格を喪失する方が、施行日(2020年4月1日)時点で国内の医療機関に入院している場合、経過措置として、入院期間中は資格が継続されます。
扶養認定日
被扶養者資格があると認定した場合、その効力の発生の日は次のいずれかによるものとします。
- 事由発生日から1か月以内にその事実が確認できる書類一式が健康保険組合へ到着したときは、事由発生日を認定日とします。
- 事由発生日から1か月を超えて書類一式が健康保険組合へ到着したときは、原則として受理した日を扶養認定日とします。ただし、天災地変、その他やむを得ない理由で届出が遅れたと認められ、且つ組合業務に支障を来さないと判断されるときは事由発生日を扶養認定日とします。
- 申請理由が「出生」である認定対象者の場合は、1・2の規定によらず、出生年月日を扶養認定日とします。
- 被保険者が提出した書類の内容に疑義があり、その審査に時間を要した場合は、健康保険組合が扶養の事実を認めて受理した日を扶養認定日とします。又、書類の提出日を扶養認定日とすることが適当でないと判断した場合には、原則として健康保険組合が決定した日を扶養認定日とします。
- これまで認定対象者に対する送金(仕送り)実績がなく、新たに送金(仕送り)を開始する(した)場合には、健康保険組合が3か月間の送金(仕送り)の事実を確認できた日を扶養認定日とします。なお、扶養認定日以後、継続する3か月間の送金(仕送り)の事実が確認できない場合は、扶養認定日に遡って資格を取り消すこととなります。
被扶養者の異動(変更)があったら
結婚や出産等により被扶養者が増えたときや、就職や別居、死亡等で、それまで被扶養者に認定されていた家族が被扶養者の認定基準を満たさなくなった場合は手続きが必要です。なお、当健康保険組合では毎年、被扶養者の資格を確認するための検認を行っています。
虚偽の申請による罰則について
虚偽の申請又は不正な内容を含む認定関連書類に基づき、被保険者による扶養実態のない扶養認定を受けたことが判明した場合には、組合の権限により扶養削除日(資格取消日)を決定します。またこれにより被扶養者資格が遡って削除された場合、その期間中に受けた保険給付や各種給付金、健診等の補助金については全額健康保険組合へ返還していただくこととなります。